科学・芸術・社会の相互作用(テーマ演習)
担当教員:磯部洋明
Instructor:ISOBE Hiroaki
概要
Abstract
京都市立芸術大学には「テーマ演習」という授業があります。簡単にいえば、学生や教員が発案した自主ゼミみたいなものが正規の授業として認定されるもので、美術学部では3~4回生の間に必ず1回はどれかのテーマ演習を履修する必要があります。大学院生は必須ではありませんが履修はできます。どのようなテーマ演習があるかは、大学のシラバスで講義科目名に「テーマ演習」と入れて検索してみて下さい。
テーマ演習の一つである「科学・芸術・社会の相互作用」は2018年度から続いています。主な目的は、芸術以外の専門分野を学ぶ他大学の学生と交流してお互いに学び合うことです。お互いの研究室/アトリエを訪問したり、それぞれの研究/制作を紹介したり、一緒に何か作ったり考えたりするワークショップをしたりしています。他大学から参加しているのは(担当教員の前職である)京都大学の学生さんが多いですが、それ以外の大学からも参加しています。(単位互換授業ではないので、他大学から参加している学生さんに単位が出るわけではありません)
授業期間以外にも、LINEグループを作って普段から情報交換や議論をしたり、時々オンラインや対面で集まって話したりしています。授業名に「社会」が入っていることからも分かるように、科学・芸術の価値や評価基準、政治や経済との距離感、ジェンダーギャップやハラスメント、労働条件など、コミュニティのしての科学と芸術が社会との間で抱えている問題に関心を持つ人も多く、そういう話題を議論したり、スピンオフ的に勉強会を開いたりもしています。
期間中のイベントは履修生優先で運営しますが、基本的には授業というよりはゆるやかなコミュニティという雰囲気で、過去の履修生や卒業生も多くがそのままLINEのグループに残って交流を続けていますし、テーマ演習履修前の1,2回生が参加することもあります。
2022年度の活動風景
オフラインで行った活動を中心に紹介します。
沓掛キャンパス訪問(7.14)
この日は京大から大学院生や研究員が沓掛キャンパスに来てくれました。まず構想設計4回生の刀禰静さんが、針金を使った自分の作品について、いつもの制作現場を案内しながら紹介しました。次に油画専攻3回生の木村颯さんの企画で、メディウムで溶いたアクリル絵具を大きなキャンパスに垂らしてみんなで一つの絵を描きました。
京都大学大学院工学研究科 マイクロエンジニアリング専攻訪問 (7.11)
薄膜を研磨して構造色のパターンを作る技術を芸術に応用したい!というAnthony Beaucamp先生からの相談を受けて、京芸の院生・卒業生と京大院生でラボを訪問し、実際に「構造色で絵を描いて」みました。本格的な共同制作につながりそうです。
京都大学生存圏研究所見学 (7.7)
京大宇治キャンパスにある生存圏研究所を訪問し、同研究所の森林圏遺伝子統御分野・矢崎研究室と、スペースグループのマイクロ波エネルギー電送実験棟を見学させて頂きました。
鴨川散歩(5.12)
構想設計3回生・関麻観子さんの企画で、みんなで鴨川の河原を散歩しました。天気予報が雨だったのですが、関さんの「雨の中歩きたい!」という希望により、(川が増水していないことを確認の上)雨の中京都駅から北大路まで河原を歩き、道中気になったものを付箋にメモ・スケッチをしてゆきました。後日、散歩中のメモ・スケッチをみんなで共有する会も持ちました。
2021年度までの活動
過去に行ってきた活動のうち、外部サイト等に記録を残しているものを紹介します。本テーマ演習の授業として行ったものではないけれど、広い意味での参加メンバーと担当教員(磯部)がかかわり、科学と芸術と社会の間にあることを考えたいというコンセプトを共有しているものを含んでいます。
座談会 表現の自由と倫理 2022
2016年に京都市立芸術大学のギャラリーアクアで開かれ、多くの批判の声があがったイベントについて振り返り、表現の自由や表現することに伴う倫理的な問題について話しあいました。(外部サイト)
2021年度の活動
2021年度は新型コロナウイルス感染症流行のため多くがオンラインでの活動となりましたが、感染対策に気を付けながら、屋外や換気の良い場所でできることを中心に、一部で対面の活動も行いました。(外部サイト)
2018-2019年度
本テーマ演習が始まったのは、担当教員の磯部が京芸に着任した2018年度の後期のことで、その年前期の大学院生向け授業「自然科学探究特講」の履修生のうち何人かが、「後期にも何かやりたい」とテーマ演習を立ち上げてくれました。最初の2年間の活動の一部がこのサイトに掲載されています。(外部サイト)
アートxサイエンスxジェンダー
芸術と科学(学術)の両方がそのコミュニティ内部に抱えているジェンダー不平等について一緒に考えることを目的にした研究会を開催しました。(外部サイト)