趣旨

 学問がどのような営みかを厳密に記述することは困難です。とはいえ、論理、普遍性、客観性、実証性、再現性など、学術研究において共有されている規範や価値観はあり、それらに基づいて学者は研究に取り組み、論文などの形で成果を創出・発表します。研究の成果が普遍的な価値を持ち、その価値が客観性、実証性、再現性などで担保されているとみなされるからこそ、それは広く人類に共有・蓄積され、次の世代へと受け渡されます。学術研究におけるこの規範と価値観を、本研究会も共有しています。
 その一方、研究に取り組む学者の多くは、研究とそれに伴う発見や創造を通して、あるいは地道な作業の繰り返しや失敗を通して、専門誌の論文のように制度化されたプラットフォームには載せがたいが、確かに価値のある経験がそこにあることを知っているのではないでしょうか。本研究会の目的は、制度化された学術研究の中で世に送り出す成果からは取りこぼされてきたものを拾い上げ、そこに新たな価値を見出すことにあります。
 芸術大学という場は、このような試みにとても適した場だと、私たちは考えています。芸術に取り組む人々は、対象から様々な価値や機能や意味を見いしたり、一見関連のないものにつながりを見いだすことに長けています。芸術は元々の制作者の意図とは異なる解釈を許し、多様な解釈を引き出すことを積極的に評価します。芸術は、それを積極的に取り入れるにせよ意図的に排除するにせよ、それを制作する人間の身体性を気にかけます。また芸術は、その成果が普遍的に共有されなくとも価値があります。全人類に届くことよりも、むしろ感性を共有する限られた人に深く届けたいと願う芸術家も多いでしょう。誰に見られることがなくともその営為が芸術家本人にとって大きな意味を持つこともあります。そして私たちは、誰にも知られることなく自らのためだけに作品を作り続けた芸術家の営為そのものに深い感動を覚えることがあります。そのような私的な営為を学問は評価できるだろうかということは、本研究会における大事な問いの一つです。
 本研究会は、おおまかには以上のような問いや問題意識を共有しつつ、学問と芸術が交わることに関心がある方に開かれたものとして、今後不定期に開催する予定です。

世話人:磯部洋明、戸澤幸作、富田直秀

第三回研究会 2025.12.11

今回は東京大学大学院総合文化研究科・特別研究員PDの土田亮さんをお招きしてご講演いただき、その後、実際に展示している作品を鑑賞しながら参加者全員でゆっくり議論する時間を持ちます。期間中(12/6-14)に開催している企画「展示でフィールドワークする2025 スリランカ編 in Kyoto」と連動した企画です。

前回と同様にオンライン(Google Meet)でも参加できるようにします。Meetのリンクはお申し込み頂いた方にメールでお知らせします。

日時:2025年12月11日(木)16時半〜18時半
会場:京都市立芸術大学 リベラルアーツ研究室(C棟3階 C-309)

プログラム

講演者:土田亮(東京大学大学院総合文化研究科文化人類学研究室・特別研究員PD)
題目:災害と日常のフィールドから立ち上げる思考

主催:わたくし学問研究会世話人の会
協力:京都市立芸術大学 Unit of Liberal Arts

参加申込:リンク先のGoogle formからお願いします。

問い合わせ:watakusi@kcua-ula.infoまでメールでお願いします。世話人3名に届きます。

アーカイブ

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